冬物衣類を正しく洗う方法をお届けしてきましたが、最終回は最もハードルが高そうなダウンジャケットや中綿が入ったアウトドアウェアなどの洗い方です。釣りなどフィールドに出るときに着ることも多く、汚れやすいこうした衣類をどう洗えばよいのでしょう。ライオン株式会社のお洗濯マイスター・大貫和泉さんに、適切に洗う方法を伺います。
ダウンジャケットは洗えない?
かつて、ダウンジャケットは自宅では洗えないものと言われていました。羽毛の油分が抜けてしまったり、羽毛が固まってしまい保温性が落ちると言われていたためです。
「いまのダウンジャケットは、おうちで洗濯できるものが増えてきました。もちろんタグの洗濯表示をしっかり確認することが大切ですが、洗濯OKの表示があれば、恐れずにトライしてみましょう」と大貫さん。
洗えるダウンジャケットの表示
ただし、ダウンジャケットは撥水性のある生地のものもあり、また羽毛は水をはじきやすく洗濯水に沈みにくいことから、洗い方に工夫が必要です。
「洗濯機のおしゃれ着洗いコースなどの弱水流コースでそのまま洗うと、ダウンジャケットが浮いたまま洗濯が終了してしまい、汚れが十分に落ちないことがあります。また、洗濯機の標準コースで洗うと、中の羽毛が出てきたり、型崩れする可能性があります」
ダウンジャケットの適切な洗濯のしかた
それではダウンジャケットを洗う手順を伺っていきましょう。
[1]汚れている部分の前処理
まずは、ダウンジャケット全体の汚れ具合をチェックします。やはり袖口や裾、首まわりなどが汚れやすいです。また、アウトドアに使うものは泥汚れがしっかり付いていることもあります。
「前処理をきちんとしておくと、洗い上がりもよくなります。洗面器などに水または30℃ほどのぬるま湯を入れ、おしゃれ着洗いの洗剤を溶かします。
ライオンの『アクロン』の場合、4Lの水に対し10mlが目安です。その洗剤液をスポンジなどに染みこませ、汚れの上から優しく叩いて染みこませましょう」
スポンジでこすってしまうと生地が傷みやすくなりますから、あくまで優しく叩くことが肝心です。
「シミが目立つ場合は、そこに色柄物用の酸素系漂白剤の原液をつけるとよいでしょう」
[2]洗濯槽で手洗い
前処理が終わったらいよいよ洗濯です。空気をたくさん含むダウンジャケットは水に浮いてしまうので、洗濯機の弱水流コースではなく、洗濯槽で手洗いをします。洗濯ネットに入れると洗濯槽の中で袖が広がらず、押し洗いしやすくなります。
洗濯機の中に、ダウンジャケットが浸かるくらいのぬるま湯を入れます。温度は30℃以下です。そこに適量のおしゃれ着洗い用の洗剤を入れて洗濯液を作ります。
「ライオンの『アクロン』の場合、水30Lに対して40mlが目安です。ダウンジャケットを洗濯液に漬け、上から優しく40回ほど押し洗いしましょう。揉み洗いは羽毛が傷むので避けてください。空気をたくさん含んだダウンジャケットは洗濯液に浮かんでしまいます。ダウンジャケットの中に洗濯液が染みこむことを意識して洗うといいですね」
[3]すすぎと脱水を繰り返す
洗い終わったら洗濯液を排水し、1分30秒ほど脱水をかけます。次に、水を溜めて優しくダウンジャケットを押し洗いしてすすぎを行います。その後、排水をして1分30秒ほど脱水をします。
「ダウンジャケットの表の布地は水を通しにくいため、脱水中に洗濯機が大きく揺れ、途中で止まることがあります。その場合には洗濯機での脱水は止め、洗面ボウルの中でダウンジャケットを丸めてぎゅっと押し絞り、さらにタオルドライして、できるだけ水分を取り除くとよいでしょう」
☑側生地の素材に注意!
通水性のないビニールやゴム引き製品、透湿防水性素材などは脱水時の水抜けが悪く、洗濯機の故障につながる恐れがあるので、洗濯機の使用は避け、バスタオルに挟んで上から押して水分を取り除くタオルドライをお勧めします。
[4]干している途中にひと工夫
脱水が終わったらそのままにせず、素早く干しましょう。コート同様、上下に手のひらで叩き、左右の肩部分を持って軽く振りさばいたら、ハンガーに掛けて陰干しにします。
「ふっくらと仕上げるために、干している途中、生地の表面が乾いてきたらジャケット全体を両手で軽く叩きながら、中の羽毛をほぐすようにしましょう。こうすることで、羽毛が固まってしまったり、偏ってしまうことを防げます」
ダウンジャケットはしっかり乾かさないと中の羽毛に水分が残って、保管中にいやな臭いやカビが発生する原因になります。
「2〜3日かけてゆっくり干し、羽毛が完全に乾くようにしましょう。手のひらでダウンジャケットをぎゅっと挟んだときに、乾ききっていないと手に水分が付きます。手に水分が付かなくなってからも、念のためにもう1日干し続けたほうがよいでしょう」
冬の衣類は、どうしても夏物のように毎日気軽に洗濯するわけにはいきません。けれどちょっとした汚れに目をつぶってしまうと、汚れはどんどん落ちにくくなります。適切な洗濯法を知っていれば、躊躇せずに洗うことができます。ぜひ恐れずにおうちでの洗濯にチャレンジしてみましょう!
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≪お話を伺った方≫
大貫和泉(おおぬき いずみ)さん
ライオン株式会社のお洗濯マイスター。消費生活アドバイザー、繊維製品品質管理士、健康予防管理専門士などの資格を持つ。洗濯用洗剤などの製品開発・調査に約20年携わり、2児の母親としての経験と研究活動を融合し、主婦・母親・女性目線で日々の洗濯に役立つ情報を伝える。
文・写真◎坂井淳一(酒ごはん研究所)